12話 | 作業手順書(製造マニュアル)をなぜ外注するのか?【メリットと導入事例】
目次
なぜ? 作業手順書の作成を外注(外部委託)するのか
製造業の現場では、製品や工程の高度化に伴い、作業手順書(製造マニュアル)の重要性がますます高まっています。多くの企業では外注(外部委託)することなく、内製しているのが現実です。しかし、現場の人手不足や属人化、短納期化といった課題により、社内での作業手順書作成が負担になっている企業も少なくありません。こうした背景に加え、技術継承の観点からも「作業手順書の外注化」が注目されています。
本コラムでは、作業手順書を外注する理由やメリット、外注化に向いている企業の特徴について、事例を踏まえながら具体的にご紹介します。
作業手順書(製造マニュアル)とは?
作業手順書(製造マニュアル)とは、製造工程で作業者が正確に業務を行うための大切なツールです。内容は製造に関する作業の順序、安全に関する注意点、必要な工具や資材、品質基準などをわかりやすくまとめたものです。作業手順書は目的や内容によって、「製造マニュアル」「作業標準書」「SOP」「作業要領書」「作業指示書」「作業マニュアル」「作業書」とも呼ばれ、企業によって呼称が異なる場合があります。
作業手順書が整備されていることで、現場の作業者は迷うことなく作業に集中でき、作業ミスや事故のリスクを低減し、製造品質を安定化させることができます。また、引き継ぎや教育の場面でも役に立ち、新人教育の効率化にもつながります。
作業手順書(製造マニュアル)作成の課題
ゼロから作業手順書を社内で作成するには多大な工数と専門的なスキルが必要です。現場の標準化や技能伝承、生産性の維持・向上に不可欠な存在ですが、実際の作成には次のような課題があります。
- 現場作業者にしかわからない「暗黙知」の言語化、視覚化
- 写真や図解、動画などの視覚表現の技術
- 品質・安全・規格など各種ガイドラインへの準拠
- 改訂履歴やバージョン管理の運用体制づくり
これらを高い水準で満たすには、技術文章の作成能力、図表やレイアウトの編集スキル、現場の実態を正確に反映するための取材力も求められます。社内リソースが不足している場合、こうした課題への対策として「作業手順書の外注化」が有効な選択肢となります。
作業手順書を外注する理由とは?
以下のようなお悩みを抱えていませんか?
- 文書化スキルを持った人材が不足している
- マニュアル作成が属人化、もしくは長らく放置されている
- ベテランの退職を控え、技能伝承が急務
- 拠点が多く、作業品質の統一がとれていない
- 海外展開で多言語化が必須
- ISO取得や監査準備をしている
- 作業ミスが多く、改善策を模索している
- 繁忙期に多くのパート(季節雇用者)を採用しなければならない
これらの課題をお持ちの企業では、外注化によって効率的かつ高品質な手順書を整備できる可能性があります。
作業手順書を外注化する5つのメリット
1. 専門性の高い品質を確保できる
図解や写真の効果的な活用だけでなく、外注先にはマニュアル制作の専門家やテクニカルライターが在籍しており、簡潔で読みやすく、伝わりやすい文書を作成します。新規取引での品質への不安は、事前の無料相談や提案を受けることで解消できます。
2. 社内工数を削減できる
作業手順書の作成には、現場のヒアリング、写真撮影、編集作業など多大な時間と工数がかかります。外注化スキームを確立することで、担当者の負担が軽減され、本来の業務である商品設計や新製品の立ち上げ、業務改善活動などに集中できる環境が整います。
3. 第三者の視点で改善提案を受けられる
社内だけでは見えにくい「冗長な手順」「わかりづらい記述」「属人化」など、第三者の視点からの改善提案を受けられるのは外注化ならではの利点です。「今ある手順書をどう直せばいいかわからない」といった場合にも、全体構成や部分表現の最適化を提案してくれます。また、法規制や業界標準への対応ができる専門の制作会社もあります。
4. 教育・標準化の効果を高める
外注先のノウハウで作成された作業手順書は、新入社員や協力会社への教育資料としても展開でき、ISO対策やQC活動にも活用できます。また、多言語化することにより国内の外国人労働者と海外拠点への作業標準化にも応用できます。
5. 情報端末(デバイス)対応
タブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイスは製造現場にも普及しつつあります。プロの制作会社は、動画マニュアルやWebマニュアルなど電子化された作業手順書を、使用するデバイスに合わせて作成することができます。
ケース別の外注化導入事例
作業手順書の外注化を導入した企業の具体的なケースをご紹介します。
リソース不足で外注化
社内の重要な技術を担当していた作業者が、突然の自己都合退職により現場を離れることになりました。この影響で、長年先延ばしにされていた作業手順書の作成が急務となり、社内リソース不足の状況を考慮して外注化を検討しました。
業界知識を持つ制作会社をWeb検索で見つけ、速やかに面談を実施。企業の技術や業務の流れを理解してもらったうえで、提案と見積もりを受け、正式に作業手順書の作成を依頼しました。社内リソースが逼迫した状況の中でも、外部の専門家と協力することで、重要な技術の喪失を最小限に抑えながら、短期間での技術継承を実現しました。
この対応により、業務の属人化が解消されるとともに、製造プロセスの安定性を維持。突発的な退職による混乱を防ぎ、継続的な事業運営を可能にする重要な取り組みとなりました。
コスト検討で外注化
ある企業では、業務の標準化を進めるために作業手順書の新規作成が急務となりました。最初は社内での作成を検討し、専任スタッフの採用を視野に入れていましたが、人件費に加え、編集ソフトの購入費や研修コストなどの固定費が予想以上に膨らむことが判明。社内リソースだけで対応するのは、経済的にも負担が大きいと判断されました。
そこで、コストや作成品質、納期の面で最適な方法を模索した結果、外部の専門業者に作業手順書の作成を依頼する決断を下すことに。業界知識を持つ制作会社と綿密に調整を行い、自社のニーズに沿った品質の高い手順書を短期間で完成させることができました。
この外注化の選択により、リソース不足の影響を最小限に抑えると同時に、円滑な運用体制を構築することにも成功しました。
新設備の導入で外注化
大手メーカーから産業用ロボットを新規導入した際、付属の取扱説明書が膨大なページ数に及び、内容をすべて読むだけでも時間がかかり過ぎるという課題に直面。さらに、ロボットの設定や運用を理解している従業員が一人しかいない状態だったため、その担当者が休むと業務が滞るリスクも抱えていました。
この属人化の問題を解消するため、自社の工程に合わせて最適化した作業手順書の作成に着手。取扱説明書の内容を厳選し、必要な情報だけをまとめたオリジナルのダイジェスト版を作成しました。この取り組みにより、作業者全員がロボットの設定や運用方法を理解できるようになり、担当者不在時の業務停止を防ぐことができました。
結果として、業務の安定性が向上し、作業手順の共有がスムーズになったことで生産効率の改善にも貢献しました。
作業の標準化で外注化
ある金型メーカーでは、長年の職人技に頼る形で業務が進められており、作業の属人化が課題となっていました。作業標準を定める必要性は認識されていたものの、具体的な基準を決めるのが難しく、標準化の取り組みは停滞。
そこで、作業手順書の作成を外部に委託することになったのですが、これが社内の大議論の火付け役となりました。外部業者に手順書を作成してもらうにあたり、社内でどのような作業標準を適用すべきかを検討する場が設けたところ、現場の作業者同士でそれぞれの手法やこだわりがぶつかり合い、「このやり方が最適だ」「いや、こうした方が品質は安定する」との意見が飛び交いました。議論は白熱しましたが、結果としてベテラン勢の知見が集約され、全員が納得できる形で標準作業が定められました。
新たな作業手順書の導入後、作業のバラつきが激減し、全体の生産効率も向上。さらに、新人の教育もスムーズになり、誰もが一定の品質を維持できる環境が整いました。
DX(デジタル化)推進で外注化
ある機械部品メーカーでは、従来の紙ベースの作業手順書を使用していましたが、情報の更新に手間がかかることや、作業者が必要な手順を素早く確認できないことが課題となっていました。そこで、作業手順書の電子化を決定し、外部業者に依頼して動画再生機能付きのデジタル手順書を導入しました。
この新しいシステムにより、作業者はタブレットを活用し、リアルタイムで手順を確認できるようになりました。複雑な作業については動画による説明も加わり、視覚的な理解が進むことで作業ミスの軽減と生産効率の向上に貢献しました。さらに、デジタル化により手順書の更新が容易になり、新製品や新しい工程にも迅速に対応できるようになったため、業務の柔軟性と標準化が強化されました。
監査や規格認証への対応で外注化
あるメーカーでは、品質管理の国際基準であるISO 9001の認証取得を目指していました。しかし、社内で作成した手順書が監査官の厳格な基準を満たしていないことが判明し、認証取得へのハードルが高まってしまいました。
この課題を克服するため、ISO認証に関する専門知識を持つ制作会社に依頼し、認証基準に完全に準拠した作業手順書を作成してもらいました。外部の専門家と連携することで、基準に沿った適切なプロセスを確立し、手順書の品質と整合性を確保。
結果として、スムーズにISO 9001の認証を取得。さらに、委託先のノウハウを活用したことで、社内の業務プロセスの効率化と標準化が加速し、より安定した品質管理体制が構築されました。

まとめ:作業手順書自体の整備が、生産力を左右する
製造業においての作業手順書は、もはや単なる「製造資料」ではなく、「生産資源」のひとつだと考えることができます。現場任せの手順書の作成では品質や効率に限界がある場合、プロの力を借りて作業手順書自体を整備することで、製造品質やスピードの向上が実現し、競争力の強化へとつながります。
「社内で作れないから外注する」ではなく、「業務効率のために、あえて外注する」。この発想が、現場の生産力を変える第一歩になります。
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